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2004年06月13日

書籍紹介#05「ケルト神話と中世騎士物語」

本日は次の書籍を紹介する。

中公新書#1254「ケルト神話と中世騎士物語 『他界』への旅と冒険」 田中仁彦著 ISBN4-12-101254-2

ケルト人はローマ帝国が勃興するまでヨーロッパ・地中海地沿岸諸国を支配していた民族である。しかし、ローマ帝国が拡大するにしたがって、その支配地域は辺境に押しやられ、最後にはアイルランド、マン島、ブリテン島(イングランド以外、すなわちスコットランド地方、ウェールズ地方、コンウォール地方)、フランス・ブルターニュ地方を残すのみとなってしまった。ブルターニュ地方の最西端には、ケルト人文明の中でもっとも美しい都市イスがあったが、一夜にして海底に飲み込まれてしまったという伝説がある。この都市が余りに美しい都市であったとされていたため、今のパリが「イスのような町」(Par-is)と名づけられたほどだ。

このブルターニュ地方の最西端の地は6世紀ごろの大波によっで、削られてしまい、海底に没したのであるが、海底に没した領域に何かあったことは、ローマ街道がこのがけの先にもまだ道が続いているような状態であることからもわかっている。

しかし、このイスという都市の存在はいまだ不明であり、著者は存在しないと考えている。そしてこれをケルト人伝説の世界「他界」ではないかと考えた(「他界」は東アジア文明においては「桃源郷」と考えると最も近いかもしれない)。この他界は通常死んだ人しか行くことのできない世界であるが、特別な聖者や英雄は生きているうちに訪れることもあったという。ケルト神話の中には勇者がこの他界を訪れ、去っていく伝説が多い。

ローマ帝国が拡大するにしたがって、ローマ市民となるケルト人も多くなり、ローマ文明にケルト文明は吸収されていった。こうした中で、ローマがキリスト教化されるにしたがって、ケルト神話も、アーサー王伝説のようなキリスト教の騎士の伝説に変貌していった。

そう、アーサー王伝説はケルト神話がベースなのである。なぜそれがわかったのか?それは、幸運にもケルト文明の正当な遺産が、先にあげた、アイルランド、イングランドを除くブリテン諸島、フランス・ブリュターニュ地方に残っていたためである。

ローマ文明にケルト文明が吸収されたといううことはキリスト教にケルト文明の宗教的側面が吸収されていったということでもある。宗教的対立は特になかったようである。「他界」のイメージがキリスト教の「天国」に似ているなど共通点も多かったからといわれている。ただし、浸透していったキリスト教がカトリックであったならば、話は違っていたかもしれない。浸透して言ったのは東方キリスト教ではなかったのではないかとされている。

これを裏付けるものとして、「聖アンナ」崇拝があげられる。カトリックは「聖マリア」崇拝であるためである。

さて、本書はしばらく、伝説の検討に入っていく。
挙げられた伝説の中には、日本の伝説や昔話によく似たものがあって、興味深い。
これら伝説の中には明らかに「他界」と思われる記述がある。「他界は」どこにあるのか、著者は地下にあると言う。

ケルト文明圏にあった地域には巨石遺跡群が多く存在するが、当時のケルト人たちがこれらを建造したとは考えにくい。しかし、彼らの伝説には「極北人」という種族が出てくる。彼らはアトランティスの末裔であり、彼らが建造、もしくは指導したと考えるものもいた。少なくとも、現状では、ピラミッドより2000年以上も前に建造されたこの巨石群を誰が作ったのか、この点については不明である。

ケルト文化を吸収したケルト・キリスト教における「他界」とはいったいどういったものであろうか。
キリスト教神話は表向きキリスト教の騎士の冒険で会ったりするのだが、中身はケルト神話のままであることが多い。

ケルト文明を吸収したキリスト教は東方キリスト教であるが、東方キリスト教はカトリックと異なり、修道院が教会の中心となっていた。もともとは、砂漠の孤立したキリスト教徒(陰修士)が集まっただけのものであったが、時代が進むにつれ、大規模化し、大修道院長を頂点とする階層組織となっていった。ケルト文明圏に作られた修道院は、ケルト文明の影響から、ドルイド教の聖なる場所(ネメトン)におかれることが多かった。そうしたことで、東方キリスト教にドルイド教の考え方が浸透していった。

ここからまた、今度はケルト・キリスト教の神話と「他界」についての検討が始まる。
最後はアーサー王伝説について、その神話と「他界」の検討を行っている。

以上が概要である。
伝説の検討については要約が難しいので、割愛した。実際に読まれることをお勧めする。

Posted by masamic at 13:05 [書籍・雑誌, 歴史] | 固定リンク

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