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2004年06月27日

書籍紹介#06「サムライカード、世界へ」

本日の書籍紹介は、

文春新書#263「サムライカード、世界へ」 湯谷昇羊 ISBN4-16-660263-2

です。

本書は「サムライカード」すなわち日本のクレジットカード会社の雄、JCB(Japan Card Bureau)が世界第4位の国際カードになっていく軌跡が描かれた、まさに「プロジェクトX」モノです。(でもプロジェクトXではまだ取り上げられていないんですよねコレ。)

クレジットカードの誕生は1950年アメリカの実業家の失敗から生まれた。夕食時に支払う現金を持ち合わせていなかったのである。これが世界初のクレジットカードカードとなるダイナーズクラブ(以後Diners)誕生のきっかけだ。

日本のクレジットカード会社はアメリカに遅れること10年、1960年12月に日本ダイナーズクラブが発行を開始した。その一ヵ月後には東京と大阪に今のJCBの前進となるJCBと大阪カードビューロー(OCB)がクレジットカードの発行を開始した。

時は1980年、すでに国内No.1シェアを持っていたJCBはライバルの住友クレジット(後の三井住友VISAカード)動向に危機感を持っていた。それまで、国内用と国際用のカードは別々に発行され、国際カードは期限が限定されたものだった。そこへ、住友クレジットは、すでに当時世界最大であったVISAと提携して国内外共通カード(ワンカード)の発行を開始したのだ。JCBはそれまでの住友クレジットと同様にアメリカンエキスプレス(以後AMEXと表記)と提携して、国際用カードとして期間限定のカードを発行していた。

JCBは住友クレジットと同様にAMEXと提携する方法もあったが、AMEXは独自に日本でゴールドカードの発行を始めてしまった。提携相手が競争相手に代わってしまったのである。それでも引き続きAMEXと提携する案や、VISAやMASTERCARD(以後MASTER)と提携することも考えられた。しかし、当時、JCBカードの所有者が期間限定の海外カードであるAMEXで利用した店舗数は2万店程度であったこともあって、JCBカードの所有者がほとんど日本人であったことも考え、この2万店でJCBカードを使えるようにすればJCBは独自に世界展開することができるのではないかと考えられた。JCBはこの案に社運をかけることになったのである。なおかつ現地居住者用の現地での発行も視野に入れていた。

1980年日本人の海外旅行先は香港、台湾、シンガポール、ハワイなど東アジアや東南アジア、太平洋地域に限られていた。そこで、最初にJCBカードを利用できる場所として香港が選ばれた。しかし、提携はなかなか上手くいかなかった。「結局撤退するのではないか。」「VISAかMASTERと提携するのではないか」などといわれ続けたが、JCBは辛抱強く加盟店を増やしていった。1981年台湾でのカード発行開始。そして、ヨーロッパへと地道に加盟店獲得の手を伸ばしていった。

住友カードの追撃。住友カードがVISAカードと提携し、統括会社VISAジャパンを設立し、カード名称を住友VISAカードと名前を変え、世界で最も使えるカードとして会員数を増やしていった。会員数の増加とともに、VISAジャパンのフランチャイズとなる地方銀行が現れ始めた。そのほかの地方銀行も地銀バンクカードを発行を開始する。VISA、MASTER,AMEXは、地銀バンクカードを取り込もうと必死になった。名称に固執したAMEXは最初に脱落、信頼度から、VISAが幹事となり、最終的にはVISA、MASTER、JCBの選択制となった。

1980年代は日本人の海外旅行ブームがJCBの加盟店獲得に追い風となった。84年には35カ国300都市3万店を達成した。しかし世の中そう上手くはいかないもので、香港で苦い経験を味わうことになる。この経験から学んだのが、現地提携カードを展開するという方法だった。つまり現地の人々が普通に利用するショップカードにJCBのクレジット機能を付加するという戦略だ。若干なりふりかまわずという展開であったため、この種類においては、VISA、MASTERとも引けをとらないであろう。

これまでの海外展開でも常に難しかったのは決済ネットワークの構築であった。展開当初はカーボンコピー式の簡単な仕組みでも受け入れられたが、世界的にクレジットカードの普及が進むと、作業の煩雑なカーボンコピー方式は敬遠されるようになった。それに変わるようにオンライン決済が普及することになるが、JCBには独自に構築する能力はなく、この点についてはそういった業務を専門に行っている会社に委託することになった。

幾度となく困難を乗り越えながら、JCBは現在、全世界の会員数はDinersを抜き世界第4位へ(第3位はAMEX)、利用可能なATMは60万台、これは5大メジャーカード最大である。

そして、200年の世界大会では「2003年までに加盟店数500万点、現地発行会員数500万人、全世界会員数5000万人」を目指すとされた。

JCBカードが上位2社を追い抜くことはないだろう。しかし、JCBにはJCB-PLAZAというほかにはないプレミアムサービスがある。本来の目的はJCB会員のためであるが、JCBカードを持っていなくても利用できる。これは、JCB-PLAZAを利用してくれた非JCB会員が将来JCB会員になってくれることを期待してのことである。実際、アメリカでの同時多発テロのときは米国各地のJCB-PLAZAは日本語情報のハブであったことは有名である。

以上が本書の概要である。5大メジャーカード(世界レベルでカード発行を行っているカード会社は5つしかない。)の一角(第4位)に日本発の国際カードがあることを誇りを持ってよいと思う。他の4大カードはすべてアメリカ発のカードなのだから。

Posted by masamic at 13:09 [書籍・雑誌, 歴史] | 固定リンク

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コメント

2年くらいまえの書籍ですね。
箱物でなく、サービス(広義の意味でのソフトウェア)産業で世界的に展開しているのはJCBくらいかと思います。
後はプラントが挙げられるけど、ソフトは完全にハードの付属物扱いだしね。

その点でベストプラクティスといえるのかも知れませんが、
この書籍だけではチト物足らないでしょうね。
詳細は、他の書籍にあたらざるを得ないというところか、と。

ま、一般的には良い書籍かと思うですよ。はい。

投稿者: ええねん (2004年06月28日 09:47)

これが書かれた時点では、まだまだ成長するのではないかと思われていましたが、現実はなかなか総うまくはいかないもので、本書でも語られていますが、アメックスと提携して相互開放することで成長することができているのが現状です。相互開放ですから、その後アメックスの加盟店も急速に増えて、JCBが3位を狙うことも難しくなっている状況です。(アメックスの看板増えましたもんね。この数年間で)

また、本書でも語られている通り、中国が国際カード事業に乗り出す可能性が極めて高くなっているのが気がかりな点でしょう。あっさりと第3位くらいをとってしまうかもしれません。

とりあえず、この本は新書であり、一般人を相手にしたものなので、詳しい話は省略してあります。私もアメックスとJCBがネットワークを相互開放したことは当時知っていましたからね。

あと、小売業のセブンイレブンがありますね。(他の日本のコンビにもアジア展開を始めていますが)セブンイレブンはアメリカにもありますし。(って、発祥はアメリカだけど…)
も一つ小売業では無印良品、ユニクロが世界展開を始めていますね。今ひとつうまく行ってませんが。

投稿者: masamic (2004年06月28日 14:44)

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